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【職人巡り旅】伝統技を守り新しさを追究。手描き友禅作家成沢泰昭さん
こんにちは。カラクリジャパンライターの梅グミです。
巡り人のこまのさんが日本全国を旅して、伝統技術の職人さんにインタビュー【職人巡り旅】。
今回は、手描き友禅作家の成沢泰昭さんです。
成人式の振袖で見かけることの多かった友禅ですが、近年では、なんとインクジェットで柄を印刷したものや、海外製のものが半数を占めるのだとか。
ファストファッション化する着物業界に迎合することなく、伝統技術を守り抜いている友禅作家。
そんな成沢さんのお話をうかがいに、こまのさんは出かけました。
手描き友禅ってどんな技術だろう?
手描き友禅は江戸時代から伝わる職人技のひとつです。
筆や刷毛を使い、布地に染料と糊で絵画を描くように、模様を染めていきます。
手作業でひとつひとつ染めていくので、繊細な模様が表現でき、作家の個性あふれる作品が多いのが特徴です。
手描き友禅一筋に50年!日本が誇る伝統技術を父から受け継ぐ
友禅はいくつかの工程を経て、完成します。
友禅の職人は生地に染料を塗り込む「色差し」という工程だけを担当する場合が多いのです。
しかし、成沢さんが先代の父から受け継いだ東京手描友禅では、絵柄のデザインから、糊置き、色差し、地染め、糊を落とす「友禅流し」まで、すべての工程をひとりの作家が行います。
手描き友禅の制作工程。糊(のり)を落とす瞬間に技術が光を放つ
図案
自分の感じたことを、どうデザインするかをを構想します。
遊ぶことも仕事だね。
浮かんだデザインは何度も推敲を重ね、下絵の図案を決定。
微調整しながら、木炭で布と同じ大きさの紙に描きます。
下絵
紙の上に布を置き、下から光で照らし、トレースします。
フリーハンドで描く、失敗の許されない一発勝負です。
糊置き
糸目糊を使って下絵をトレースします。
成沢さんが使う糸目糊は、もち米を使った真糊を使用しています。
真糊は水で流すことができ、友禅流しの際に染料が落ちにくいので、環境に優しいそうです。
また、絵の輪郭が柔らかく、温もりのある模様に仕上がるのだとか。
小袖が普及した時代から使われている真糊は、もち米を炊き上げるなど、とても手間がかかります。
糊は天気や湿度によって変質しやすいので、毎日調整が必要です。
糊の質が友禅染めの仕上がりを大きく左右するので、豊富な経験と技術がないと、真糊を使って染めることはできません。
色差し
「色差し」という名のとおり、生地に染料をしっかり差すように柄を描きます。
色差しもまた一発勝負。緊張感のある作業です。
伏せ糊置き
地染めのとき、絵柄が染まらないように、糊を塗ってマスキングします。
地染め
平刷毛を使って、絵柄以外の地の部分を一気に染めていきます。
途中で手を止めたら、刷毛の跡が残ってしまい、絶対消せない致命的な失敗となるからです。
友禅流し
水洗いし、伏せ糊置きでマスキングした糊や余分な染料を落とします。
昔は川で行っていた作業です。
何もないところからストーリーを構想。つねに新しいデザインを
柄にする図案は、ストーリーのなかの、ある瞬間を切り取ったもの。
社会へ自然破壊について訴えるデザインならば、自然破壊そのものを描くのではなく、たくさんいたはずの蛍が3匹になってしまった瞬間を描いている。
ストーリーが転換する、前後のシーンを選んで描いているそう。