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【職人巡り旅】色を大切に、伝統技法で輝きを作る七宝職人坂森登さん
こんにちは。カラクリジャパンライターの梅グミです。
今日は女性の多くが大好きなアクセサリーに関係のある職人さんです。
七宝ってご存知ですか?もしかしたら「やったことあるよ!」という方もいらっしゃるかもしれません。
私の母も七宝の講座に通って作ってくれたので、私もいくつか持っていました。
残念ながら、割れてしまって処分してしまったのですが、実は直せたのではないかというお話がインタビューから飛び出しました!
巡り人こまのさんも、思わずにっこりしてしまうほどきれいな七宝。
江戸時代から続く伝統技術を受け継ぐ七宝職人、坂森登さんにこまのさんがお話をうかがってきました。
七宝って?どんな伝統工芸技法なの?何が作れるの?
美しく豊富な色使いと、100年経っても色があせないところから、仏教では「7つの宝石」と例えられ、尊重されてきた七宝。
奈良にある正倉院に七宝鏡が所蔵品されるなど、古い歴史があります。
日本で本格的に作られるようになったのは江戸時代初期と伝えられています。
陶器や磁器は、土や粘土を焼き上げて作ります。
それに対し、七宝は、素地や土台が「金・銀・銅などの金属」でできています。
「京七宝」と「東京七宝」、家業を継いで2つの伝統技術をあやつる
坂森さんは七宝職人の家に生まれ、父が始めた「坂森七宝工芸店」を継ぎました。
七宝には大きく分けると2つの製法があります。
1つは名古屋発祥の「有線七宝」。もう1つは有線七宝から派生してできた「メタル七宝(東京七宝)」です。
有線七宝は、型を使わず、細い銀線で描いた枠のなかに、釉薬で色を入れて焼いていきます。
完成した作品は1点もの。
ハンドメイドなので、全く同じものは作れません。
1か所に複数の色とぼかしを入れるため、技術が必要になってきます。
メタル七宝は、釉薬を載せる基板を作る際、型を使います。
プレス機で同じ形のものをたくさん作り、ガラスの粉を焼き付けていきます。
メタル七宝のルーツは明治初期にできた勲章制度です。
日清、日露戦争などで叙位叙勲を受ける人が増加。
当時、勲章にカラフルな色をつけられる技術は七宝にしかなく、大量生産できる技術が開発されました。
色あざやかなガラスが美しい伝統工芸品「七宝」ができるまで
釉薬を作る
ガラスの粒に水をさし、上澄みを捨てる「こずる」という作業を繰り返して、ガラスの粒を細かくしていきます。
制作の手順
1. メタルを空焼き
焼くことで素地の油を落とします。
素地に油が付いていると釉薬を盛ることができません。
2. 酸洗いする
塩酸や硝酸などで洗い、素地の表面をきれいにします。
表面が汚いままだと発色が悪く、きれいな七宝に仕上がりません。
3. 一番盛り
七宝に欠かせない釉薬を竹のヘラを使って、のせていきます。
4. 一番焼き
800度の電気炉で焼いていきます。
釉薬の発色は温度で変わってくるので、作品の出来ばえを大きく左右する作業です。
5.酸洗い
3.〜5.を色の数だけ、繰り返します。
釉薬の種類により、きれいに発色する温度が微妙にことなるため、1色に対して1回焼くという工程を繰り返します。
6. 荒磨ぎ
七宝の表面にある釉薬を削り、模様が出るよう粗い砥石で磨いていきます。
7.仕上げ磨ぎ
丁寧に細かい砥石で磨いて仕上げます。
磨きが粗いとメッキするときにうまく仕上がりません。
反対に、磨き過ぎてしまうと、思うような発色が得られなくなります。
8. 仕上げ焼き
七宝職人の仕事はここまでです。
焼きあがった作品は、メッキ屋さんのもとでメッキ仕上げをし、完成!
350色ひとつひとつをこだわって発色させるのが腕の見せどころ
釉薬に使う絵の具は約600色。
主に使うのは350色です。
たとえ1色だっとしても、色がきちんと出ていないと、他の色も出なくなってしまうそうです。
色によって焼く温度が少しずつちがっていて、高めの温度できれいに発色するもの、低めの温度できれいに色が出るものを見きわめる必要があるのだとか。
思ったような色を出すには高い技術が必要です。
七宝の需要は年々減少。七宝を身近に感じてもらいたい
全盛期の明治時代と比べると、現代では七宝の需要は高くありません。
カラフルな樹脂が安価に入手できるようになったため、七宝はコストに見合わなくなってしまったのです。
年々仕事も減り、東京七宝の伝統工芸士も3人しかいません。
後継者を雇うのもままならない、厳しい状況です。
中学生の体験教室では、こちらが考えないような発想をする子どもがいて、おもしろいそう。
大人の教室でも、生徒さんが自分でデザインを考え、作りたいものを自由に作ってもらっているのだとか。
坂森七宝工芸店 http://sakamori-shippo.com/