目次
【職人巡り旅】ゲーム「刀剣乱舞」で見学者急増。刀剣研師長岡靖昌さん
こんにちは。カラクリジャパンライターの梅グミです。
みなさんは「刀剣乱舞」というオンラインゲームをご存知でしょうか?
「とうらぶ」という略称は聞いたことがある人もいるかもしれませんね。
擬人化した日本刀を集めて育成し、敵を倒していくゲームなのですが、ミュージカルや舞台、TVアニメに展開されるほど人気になっています。
ゲームに登場する刀剣を所蔵している神社やお寺、博物館、美術館に足を運ぶファンも多いのだとか。
刀剣乱舞の女性ファン「刀剣女子」は、刀剣を研く職人・刀剣研師の元にも見学に訪れていると聞き、巡り人こまのさんがインタビューに出かけました。
中に通されると、部屋の壁には多くの日本刀がならび、中央に「研ぎ船」と呼ばれる作業場が。
刀の製法、時代ごとのちがいを見きわめなければ、研ぐことはできない
刀を研ぐという作業は、刀を小さくしてしまいます。
もともとの刀の姿形を壊さないようにするためには、刀全体をまんべんなく研いでいかなくてはなりません。
見ただけで修正箇所がわかるようにならないと、刀に砥石を当てることができません。
自称研ぎ師のような人が研ぐと、刀の寿命までも削られる
刀の形は、時代や流派、刀の作り手によって、すべてちがいます。
刀のカーブの反り具合ひとつとっても、少しでも変えてしまうことは許されません。
刀を研ぐためには、いつ、どこの流派の誰が作ったか、見きわめる目が必要です。
これから研ごうとする刀がもともとどんな形をしていたか、知らないと研げません。
0.2ミリ削るだけでも何百年もの重みがある
日本が世界に誇る刀剣の研磨技術を見せていただきました!
最初は刀を砥石に直接あてて研ぐ「下地研ぎ」をします。
次に「仕上げ研ぎ」をしていきます。
仕上げ研ぎに使う砥石は、京都の一部の山でしか採れない「内曇砥(うちぐもりど)」という石を使います。
刀の切先に下地研ぎと同じ砥石を使ってしまうと、鏡のようにつるつるとした仕上がりになってしまいます。
研ぎの最後の方では、紙やすりほどの薄さにはがした砥石を親指の上に小さく乗せて、指を細かく動かして削っていきます。
カメラマン10年のキャリアを手放し刀剣研師に転身。その理由とは
長岡さんの前職はカメラマン。
キャリアは10年ほどあり、収入も今の倍はありました。
しかし、デジタルカメラの普及で、自分の仕事がおもしろくなくなってしまいました。
今後、カメラの撮影技術は仕事にならないと思ったからです。
刀は多面体の鏡。
まわさないとその美しさはわからないそうなのですが、いろいろなものが映りこむので、撮るのが難しいとのこと。
刀の写真撮影をきっかけに刀屋さんと仲良くなっていき、長岡さんは気づけば刀にはまっていました。
独立まで最低10年の刀剣研師の世界に、30代で飛び込んだ
刀剣研師の世界では、最低10年は師匠について修行が必要だと言われています。
高校卒業してすぐに弟子入りする人がほとんどというなか、長岡さんは30代で修行に入りました。
そんな長岡さんですが、他の若いお弟子さんたちとはちがう能力がありました。
見たものを再現する能力です。
写真をやっていて身につけた能力を、長岡さんは活かすことができました。
ゲーム「刀剣乱舞」の影響で、刀剣研師に興味を持つ人も
「刀剣乱舞」はアニメ化され、2017年7月にはシリーズ第2弾である「活撃 刀剣乱舞」が放送されています。刀剣人気はまだまだ続きそうな予感。
長岡さんはこの盛り上がりをどうとらえているのでしょうか?
長岡さんのもとにも、若い女性を中心に見学に訪れる人が後を絶たない。
「刀剣女子」と呼ばれる彼女たち、最初は「キャー」と盛り上がっているけれど、ペンとノートを持参して見学するなど、とても勉強熱心。
長岡さんたち刀剣研師の仕事を、日本の伝統工芸文化として、とらえているようです。
2016年秋シーズン・日テレで放送されたドラマ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」にも登場!
長岡さんのサイトはこちら ⇒長岡日本刀研磨所