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【職人巡り旅】日本の美をガラスに濃淡で表現!彫刻硝子作家山田浩子さん
こんにちは。カラクリジャパンライターの梅グミです。
みなさんは彫刻硝子をご存知でしょうか?
まるでガラスの中に絵が浮かび上がっているかのようなグラス。
それが、彫刻硝子の作品です。
サンドブラストという技法で、美しいガラス作品をつくり続ける作家、山田浩子さんの元を、巡り人こまのさんが尋ねました。
初心者でも楽しめる!ガラスの魅力を体感できるサンドブラストとは
サンドブラストは、エア・コンプレッサーという機械を使い、ガラスの表面に金剛砂などの研磨材を吹きつけ、彫刻をほどこす技法です。
江戸切子など、他のガラス工芸の彫刻技法と比べ、彫刻のスピードが速いのが特徴です。
吹きつける砂の粒子や空気の圧力の大小により、彫刻の深さや削った面のキメに細やかな変化を持たせることが可能です。
サンドブラストはガラス工芸のなかでは比較的新しい技法です。
起源は定かではありませんが、1870年、アメリカの発明家ベンジャミン・ティルマンが、船のさび落としの装置をつくったことが記録に残されています。
日本には、1887年(明治20年)、東京工業大学の前身である東京職工学校に導入されました。
現在、サンドブラストはガラスだけではなく、さまざまな素材にも使われています。
他の日本の伝統技術と組み合わせた作品もたくさん生まれている、注目の技法なのです!
ガラスを削り取り、美しさを加える。サンドブラストの制作工程
ガラスに彫刻する図案を考えます。
図案は描きやすいサイズで仕上げ、コピー機で拡大・縮小して、調整します。
図案を転写シートにコピーしたものを器に貼り、デザインナイフでカットしていきます。
彫刻する器は職人さんがつくっているものもありますが、鋳造硝子は山田さんが自らつくられています。
鋳造硝子の工程は、まず粘土で完成させたい形を作り、石膏で周囲を固めたあと、中の粘土をぬきます。粘土をぬいたあとにできた空洞に粒の硝子を敷き詰め、電気炉で焼くと完成です。
元々の色を残したい部分にだけマスキングをし、あとは全部彫っているんですね。
山田さんは、サンドブラストの技法で、剣道の防具である胴の漆の表面に彫刻をしていたこともあるとか。
蒔絵や螺鈿など、漆の工芸品はいろいろありますが、当時、漆にサンドブラストをしていたのは山田さんだけだったそう。
同じ色味を出すためには、毎回細かい調整が必要になるそうです。
子育て後の再就職先で偶然、サンドブラストと出会い、担当に
一番下のお子さんが大きくなり、子育てがひと段落して再就職したのが、ステンドグラスの会社だった山田さん。
偶然にも、サンドブラストの担当になり、扉などの装飾に使われるすりガラスや、置物などのテーブルウェアを加工。
この仕事が、ガラス工芸に関わるきっかけになりました。
このとき、山田さんは「35歳くらいだった」と言います。
でも、美術の仕事につきたいと思わなかった
山田さんは、高校入学後の5月には違和感を覚えていました。 周囲は優秀な人ばかりで、すぐに「自分には才能がない」と思ったそう。 大学は体育系の学部へ進学しました。
しかし、この高校での経験が今の引き出しの多さにつながった山田さん。
通常、美術系の高校のカリキュラムでは、油絵を選択したら油絵に集中して取り組むそう。
山田さんの通っていた女子美術大学付属高等学校では美術に関することをひと通りやることができました。
彫刻硝子作家として独立したのは、周囲の後押しがあったから
勤めていたステンドグラスの会社を退職した山田さん。
「せっかく得た技術を活かさないのはもったいない」と家族や友人に言われたのをきっかけに、彫刻ガラスの機械を自宅に導入して、作品づくりを始めました。
作品を展覧会や販売会に出品していると、来ていただいたお客様から「彫刻ガラスはどこで習えるのか」「ぜひ、作り方を教えてほしい」という声をいただくように。
2001年5月に、中野の自宅で教室をスタートさせました。
子どもが独立した現在は、自宅の10畳と6畳の部屋を工房として使っています。
教室はアットホームな雰囲気だと評判です。
教室を開くかたわら、山田さんは月に1、2回、作品の展覧会や販売会などに出品しています。
ほかにも、中野区の伝統工芸保存会をはじめ、さまざまな美術イベントの運営にも参画するなど、精力的に活動されています。
ガラスに繊細な図案を彫刻することができるサンドブラスト。
ぜひ、体験してみてはいかがでしょうか?
山田浩子さんの教室 T・Hグラス工房