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【職人巡り旅】音の響きと木の美しさにこだわるオルゴール作家永井淳さん
こんにちは。カラクリジャパンライターの梅グミです。
誰もが一度は聴いたことがあるオルゴール。そのオルゴールを「楽器」としてとらえ、深い音を生み出している作家が永井淳さんです。
これまで私たちが聴いていたオルゴールとはまるでちがう、永井さんのオルゴール。
この音色の秘密を探りに、巡り人こまのさん、永井さんの元を訪ねました。
美しい音のオルゴール。箱の中には伝統技術が詰められている
オルゴールにはさまざまな種類があります。
永井さんが製造しているのは、櫛歯と呼ばれる細かい金属の板が弾かれ、音が出るタイプのオルゴールです。
櫛歯の弾かれ方にもいろいろあります。
丸い筒に細かい突起がたくさん付けられ、櫛歯と呼ばれる細い金属の板が弾かれて音の出るシリンダーオルゴール。
私たちの身近にあるオルゴールです。
円盤にピンと呼ばれる細かい突起が付けられているディスクオルゴール。
紙に開けられた穴を弾いて音の出るカードオルゴール
オルゴールの響きが美しいのは、木の箱が音を共鳴させているから
オルゴールの音が美しく響くかどうかは、箱にかかっています。
櫛歯が弾かれて出る音は振動で伝わり、私たちの耳に届くのですが、箱に入れることでさらに響きが豊かになります。
オルゴールで重要な役割を果たしている箱の部分を、永井さんは作っているのです。
ガラスやプラスチックだと、聴いたときにいやな感じがしちゃう
紫檀は、2000年前から中国で楽器に使われている木です。
日本では三味線などに紫檀が使われているのだとか。
永井さんが生み出す楽器オルゴール。制作には江戸指物の技術が!
永井さんはオルゴールについて、こんな考えを持っていらっしゃいます。
楽器は音量と低音の響き、演奏の3要素が大切
永井さんはオルゴールを製作する以前から、クラッシク音楽を聴くことが好きで、音楽に関する知識も持っていました。
オルゴールを製作するにあたり、楽器と同じように響かせるために、ピアノやバイオリンの構造を研究。
江戸指物の技術にいきつきました。
オルゴールの音は木の繊維を伝って響きます。
短い木の繊維よりも長い木の繊維を使うことで、音の響きがさらに良くなるのです。
木の繊維は釘や接着剤を使うと、切れてしまいます。
そこで、釘や接着剤を使わずに箱物などをつくる江戸指物の技術が必要になりました。
永井さんは江戸指物の伝統工芸士に師事し、技術を習得していました。
オルゴールの製作は、まず木を乾燥させることから始めます。
加工したあとの変形を少なくするためには、乾かすことが重要です。
乾燥した木を加工してオルゴールの箱にしていくのですが、永井さんは彫刻を施したりはしません。
木の色や木目の美しさを活かすためでもありますが、飾りをつけることもまた、音の響きを悪くする原因になるからです。
同じ理由で、膜が形成されてします接着剤や一般的なニスも使いません。
塗装には、バイオリンでも使用される天然樹脂のセラックニスを使っています。
セラックニスのなかでも、無色透明の食用セラックニスで塗装し、木目の美しさをそこなわないことにこだわっています。
オルゴールを作りはじめたきっかけは、ティッシュボックスだった!
屋久杉でつくったティッシュボックスを義弟にプレゼントしたことをきっかけに、義弟が勤めるオルゴールメーカーから声がかかり、オルゴールの箱をつくることになりました。
永井さんはオルゴールや楽器の専門書で勉強。
70種類以上の木を試し、完成した箱をメーカーに届けたところ、その場にいた技術者全員が驚いたそう。
それから、永井さんはメーカーのコンサルタントを務め、オルゴールの箱を開発してきました。
本業で参加した国際家具見本市でもオルゴールを演奏したところ、新聞記者の目にとまり、以後、雑誌やTVでも紹介されるように。
現在は、コンサートの依頼や伝統工芸展への出展と、オルゴールの素晴らしさを伝える活動をされています。
永井さんのオルゴール、美しい音の響きを感じてみてはいかがでしょうか?