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【職人巡り旅】「かわいい」とだっこしたくなる人形の作家藤本英以さん
こんにちは。カラクリジャパンライターの梅グミです。
体のパーツごとに彫られ、足の関節を折り曲げることのできる三つ折人形。
見る人を和ませる子どもの表情と、立たせたり座らせたり動かせる体は、江戸時代からの伝統技法によるものです。
三つ折人形をつくることのできる数少ない作家のひとり、藤本英以さんは、さまざまな人形や、絵画、書道、篆刻まで手がける希有な存在。
そんな藤本さんのアトリエに巡りびと・こまのさんがお邪魔しました。
木彫りでつくる、三つ折人形(みつおれにんぎょう)
足の付け根、ひざ、足首の3か所を折り曲げることができます。
金属を使わずに、なぜパーツを組み合わせることができるか?
不思議に思いますが、その秘密は三つ折人形の制作者にしか教えられないそうです。
作ることができるのは2人だけ!? 三つ折人形の制作工程
三つ折人形に使用する木材は桐です。頭からつま先まで、ひとつの桐材を使います。
藤本さんがこの日持っていた人形には、会津産の桐が使われていました。
制作工程はシンプルなのですが、立つ、正座、お座りの3つの姿勢すべてで人形が倒れないようにするためには、勘や慣れが必要だと言います。
人形づくりの中でもっとも難しく、最高級品であるとされる三つ折人形。
シンプルでありながら、姿勢を保つバランスが難しいため、1年に1体くらいしか作れないのです。
弟子はもう40年くらい通ってる
医療費の代わりに、作った人形を買ってもらった経験も!
人形の種類も幅広いのですが、人形制作も木彫胡粉、木彫彩色、銅粉を塗って仕上げたものと、様々な技法を手がけています。
栄養失調で倒れたとき、病院に払うお金がなくて、 人形を作って買い取ってもらい、支払った
人形を作り始めた頃はカッパのぬいぐるみを、次にフランス人形を作るようになったのだとか。
男が作家になんかなるなという風習があった
仕事にできるのは職人か商売人だったと言います。
0から1を作り出す。 アイデアからスタートする作業の方がおもしろいから
必要なことを自分でできるようになれば、作家の幅は広がる
藤本さんの自宅兼アトリエには人形はもちろん、日本画、南画、洋画、書道、篆刻と幅広いジャンルの作品が、飾られています。
「必要なら自分でできるようになっちゃえ」がポリシーの藤本さん。
ふだん使っている杖も自身で作られたもの。
庭のぶどうの木が枯れたときに削り、底に皮を張って杖に仕立てたのだとか。
0から1を生み出し、思い描く完成形に必要なことはなんでも勉強してきた藤本さんだからこそ、三つ折人形の技を受け継げたのかもしれませんね。
「精魂こめてつくる」。このこだわりが人形に温もりを与えている
カタチだけ人形さんにしたって、 だっこしたときに温かみを感じない
人形を見て「かわいいな」と思うのは、その人形に作家の心がこもっているから感じられるものだと、藤本さんは考えています。